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さわかみ投信株式会社「さわかみファンド」-Part1

  直販の代名詞として名高いさわかみ投信株式会社の「さわかみファンド」について、取締役会長の澤上篤人氏にお話を伺いました。

取材日時  平成24年12月26日  14:00~15:00
場所        さわかみ投信株式会社本社

多くの著作もあってご活躍ですが、どのような仕事をされていらっしゃいますか

  そうですね、本の執筆は新幹線での移動時間等を充てているだけで、仕事のほんの一部です。時間がなくて大変ですよ(笑)。まず大きな柱としてはさわかみ投信という会社の全体の経営、それから更にさわかみ財団その他三社のさわかみグループ全体の経営に携わっています。
  このような仕事を始めたきっかけは、直接金融に対する問題意識です。日本はずっと銀行や生保が中心になってお金を社会に流す間接金融主体の経済運営でやってきました。これを変えて直接金融のお金の流れを作り、それを広げて行くのが一番大きな目的なのです。直接金融はお金の出し手である個人とお金の取り手である企業との間を結び付けます。その直接金融を広げる一つの手段としてさわかみ投信があります。さわかみ投信は上場会社の株式しか買いませんが、実際の社会には未上場会社の方がはるかに多いので、これ以外の手段として未上場企業への投資やベンチャー・キャピタルのしくみ等を準備しつつあります。財産作りをしたい方は投信を買えば良いし、ベンチャー・キャピタルの企業を応援しても良い方には応援して頂きたいのです。個人がリスクマネーを提供するしくみや流れを作り、資金の出し手となる個人をもっと増やし、その層を厚くしたいと思っています。これは自分のライフワークです。まずはさわかみ投信を立ち上げて大きくしてきました。こちらはどんどん若い連中に任せて、自分は次をやって行こうと思っています。これら全体がさわかみグループの本来の仕事なのです。

ベンチャー・キャピタルの分野でも独自のスタンスで臨まれているのですか?

  多くのベンチャー・キャピタルが利益の大きい上場の「出口」ばかりに力を入れていますね。そこが、そもそも違います。もっともっと大事な部分、つまり育てるプロセスであるインキュベーションの段階を大切にしていきたいですね。だから儲け儲けで出口を求めればよいというものでもありません。
  戦略コンサルのように会社をバリューアップさせるサポートは、会社を如何に大きくするのか、上場させるのか、見映えを良くするのかという問題ですが、それだけでは駄目なのです。良い会社は存続させなければならないし、高い技術力のある会社の技術はずっと続いて行かなければなりません。逆に、そういった会社があり続ければ良いのであって、無理して大きくする必要もない訳です。大きくなるべき会社もあれば、大きくならなくて良い会社もあるので、色々な会社に合わせたお手伝いをして行こうと思っています。
  グループ会社のソーシャルキャピタル・プロダクション(SCP)のインベスターズTVというネットTVは、全くコマーシャルを入れずに完全な持ち出しでやっています。その代わり自分たちの好きなことができる強みを生かし、本物のみを追い求めて世の中に貢献しようとしています。これは単なる儲けという意味のリターンが目的ではなく、ソーシャル・リターンとも呼ぶべき方向でやっています。
  そもそも出口を考えない発想は、さわかみ投信をスタートした時から変わりません。金儲けやビジネスを大きくする目的ではなかったから、業界の非常識と言われる1%の安い信託報酬でアクティブ運用を始めました。当然ノーロードですしね。グループ全体で世の中の人々の財産作りのため、あるいは良い企業と個人とをマッチングさせるために仕事をしていますし、このさわかみグループが大きくなって出た利益の一定割合は財団に回して社会還元しています。財団から熊野古道の修復などへ充てる資金を寄付しています。ウチ全体が相当に社会性を持ったグループだと自負しています。

大勢の若い方も澤上さんの話に集まりますね

  随分前からセミナーや勉強会をたくさんやっています。例えば地方の誰かに来て欲しいと頼まれたら、「5人か10人集めてもらえれば行くぞ」と返事しています。自然発生的な意欲が集まった勉強会といったものを大事にしたいのです。勉強したい人が増え、気が付いたら段々大きくなりました。
  そこではファンドの営業や宣伝を一切しません。例えば「自立して堂々と生きよう」というテーマで勉強会をしています。「人間誰しも真面目に働くのは当たり前。だから、働かなければいけない。ただら、お金にも働いてもらおう。自分の働きを右足に例えれば、左足はお金の働きだね。右足と左足でしっかりと生きて行く人生、これが成熟だよね、と。そうすると、新興国への投資するのはどう思いますか?という質問なんかがくる。その時は、我が身が例えば日本の広島(福山)にあるのに、お金だけベトナムへ稼ぎに行けというのは、右足が福山で左足がベトナムにいたらおかしいのと同じくらい不自然ではないか?お金には身近なところでゆっくり働いてもらいなさい、と答えるようにしています。それが自然で当たり前の生き方だよね?そういった地に足がついた投資で経済的に自立し、堂々と生きて行こう。」という内容です。本の販売も一切なしです。手ぶらで行き、一緒に勉強するのです。
  資産形成で一番大事なのは、身近なところから始める事です。そこから広げて行けば良いのです。解らないものに手を出さないのは投資の世界の鉄則でしょう?ウロ覚えのこと、ちょっと勉強したことで投資したがる人が増えていますが、解らないもので分散するのは最悪なのです。例えば通貨選択のような難しい投資信託は「よくやるよなぁ」と思います。グローバルな投資をするなら自分もグローバルな生活基盤で働けば良いとも言えますが、日本人の中で最も世界の運用現場を知っている部類の自分が「ゆっくり身近で良い」と言っているのです。だから、まずは足元の自分の周りの世界から始めれば良いのではないでしょうか(笑)。

投資教育はどうあるべきとお考えですか

  投資教育はやりません。話が金儲けの方に傾いてしまうからです。如何にかっこよくお金を使うか、お金を回していくかという方向の教育はしなければなりません。お金をまわした結果として、お金が増えるだけの話です。皆お金を増やしたいばかりでしょう?それは無理です。金融教育や自己資産防衛のような次元じゃつまらないし、もっと広い視点で考えて欲しいのです。リターンは戻ってくるという意味であって、稼ぐとかサヤを抜くという意味はありません。皆そこを間違えています。世間では投資教育が重要だと騒いでいますが、我々は独自の方向へ走っています。世間と一緒にいわゆる投資教育をする気はないですね。

アメリカに比べて個人の投信の浸透割合が低いのはビジネススキームの問題ですか?

  アメリカやヨーロッパにどのくらいの投資の歴史があると思いますか?実は30年です。1980年代のアメリカの個人の金融資産で投信を保有している比率は1%だったし、ドイツ・フランスに至っては限りなくゼロでした。一般には知られていないので驚かれるのでしょうが、自分はその前からずっと運用現場を見ているので知っています。それが80年代の10年間で、10%を超えるまでへ急成長しました。ポピュラーになったその契機が大事なポイントで、あちらでは石油ショック後に経済が無茶苦茶になってしまった事でした。経済が無茶苦茶になると給料も減るので生活防衛する必要性が増し、「貯蓄から投資」へ資金がシフトしました。そして国の税制支援もあって一気に投信が普及したのです。日本の場合も税制を別にすれば、今や状況が揃っています。だから日本の投信も次の10年でビックリするほど拡大するだろうという将来展望を持っています。1980年代の日本に投信が必要なかったのは、経済がすごく成長して間接金融がうまく回っていたし、かつ給料は増えたし年金ももらえたし、終身雇用で人生設計として問題がなかったからです。真面目に働いて余った分を預貯金しておけば十分で、投信など必要なかったのです。

今後10年の投資信託の展望は

  これはものすごい変化を見込んでいます。現在60兆円の残高に100兆円の上積みがあってもおかしくないと。その過程で相当な地殻変動が起るでしょう。断言できないけれど、はっきり見えてくると思います。我々のような直販の投信が増えて、既存の投信が段々捨てられる図式が見られるのでしょう。運用会社や販社のビジネスの意図がどうあれ、受益者は自由に投信を選べるのですから。今はまだ小さな直販会社ですが、大きくなるにつれて益々受益者から選ばれやすくなるはずです。直販投信は相当に地歩を築いていきますよ。
  そうなれば初めてこれまでビジネス、ビジネスで押し込みをやっていた既存の投信が、自分たちが捨てられないように嫌々ながらも受益者の方を向くでしょう。そうやって全体が変わるイメージです。10年後、手数料を稼ぐという考え方は変わって来るでしょう。つまらない投信はなくなっても、投信そのものの種類は増えると思います。本当にピンポイントで運用する商品である代わりに運用報酬が高かったりクローズドだったり・・・。全体としてはコストを安くするのも当たり前の流れでしょう。一般の方々にとっても良い方向で財産形成ができるようになり、楽しみですね。どんどん投信ビジネスが成長し、更に特徴のあるものがどんどん伸びるはずです。
  うちは積み立てもあり、現在も140ヶ月連続の資金流入増です。世界に類のない完全にギネスものです。登録しようと思ったらあまりにプライベートすぎると言われたけれど(笑)。運用には資金流入があるという事が大切で、そこをウチは作ってきました。つまり「長期で投資する」のだから「目先の数字ではない」と語り続けてきました。どれだけ長期投資のしっかりとした運用理念を持ってぶれずに続けるかは非常に大切です。設立以来13年全くぶれない、そういう事が効いて来ます。営業すればがっかりしたり悔やんだりするケースも出るけれど、ウチは一切営業をしません。長期投資望む方々がクチコミで集まって来ます。だから本格的な長期投資ができます。ここから本格的な成績が出たら爆発するでしょう。ぶれずに本気で長期投資し、なお成績を伴った安心して任せられるファンドは他にないのですから。純資産総額でいうと、例えば、「グロソブ」(グローバル・ソブリン・オープン)が過去の一断面で5兆8千億に達しているので、さわかみファンドも10年後には5兆か10兆円くらいに増えてもおかしくないと思います。他にまともな商品がないのだから、抜くのではなくクチコミで勝手に増えて行くのです。

来年(2013年)株式相場が上昇するとお考えの根拠は

  第一は世界経済の成長です。この30年の金融バブルが崩壊して世の中みんな引きずり回されているけれど、世界経済の成長は誰にも止められません。着実なその成長を支える企業の経済活動は益々活発になります。また金融バブルが崩壊したと言われるけれど、このような企業を応援しようという投資が伸びているのは間違いないので、どこかで株価に現れてくるはずです。それが来年ぐらいと見ています。第二は30年越しのこの債券の時代が終わりを迎えつつある事です。いずれ国債バブルがはじけて債券から株への資金シフトが久しぶりに起こり、これが株高を後押しします。第三は日本株市場特有の問題であった株式持ち合いの解消売りがなくなり、買えば上がる構造になっている事です。これまでは買う人がいなかったのですが、買う人が出れば上がります。だから日本株は次の10年が一番面白いと思います。びっくりする程ね。日本経済は活力を取り戻すでしょうが、その過程で国債バブルの崩壊・金利の上昇・財政破綻で混乱を来たすでしょう。そういった混乱の一方で株が上がるでしょう。キチンとやる事をやっていた人と何もしなかった人の差が出るでしょう。つまり漠然と預貯金や国債が安全だと思っていた人は、大変な思いをすると思いますよ。

預貯金が株に向かわないのは何故だとお考えですか

  一つには「知らない」からです。もう一つはウチの責任でもあり忸怩たる思いがあります。さわかみファンドは99年に運用を始め、2001~2004年間の不良債権処理を進めた小泉改革の時代の暴落した株価でたっぷりと買っていたので、2005~2007年にはは基準価額が2万円へポンと上昇し、完璧な長期投資の実績を出すことができました。サブプライム問題やリーマンショックが来た今回も買いまくっているので、やっていることは当時と同じです。ところが株価全般は2003年よりも売られてしまう局面が出るなど売り込まれてしまいました。結局ウチの基準価額全般も「行って来い」となってしまい、多くの投資家に長期投資の魅力を実感してもらう事ができませんでした。仮にこれが1万6千円か7千円で止まっていたら、綺麗な長期投資のモデルを披露できたのにと残念です。
  長期投資を前提とした安心してお任せ頂けるファンドが、すごい成績を実績として出して世の中にモデルを示せば、日本の投信のイメージが一変します。これまでは毎月分配型が流行していましたが、一旦大混乱が起きればクレームの連続で営業は効かなくなりますから、投信から人が離れて販売していた銀行も大変だと思います。ただ投信の全部が駄目になるのではありません。最近はノーロードの投信も増え、きちんとしたところが選ばれつつあります。そのような先に集約されて来るのです。良いものはその時ドーンと上がっているでしょう。ここまでは忸怩たる思いがあって責任を感じていますが、「今に見ておれ」の気持ちです。

投信業界のマーケティング戦略をどのようにご覧になっていますか

  SNSやメルマガはやっています。でもウチは営業もしないし宣伝もしません。直販なので口座管理部は比較的大きいけれど、それでもこれはシステム化ができます。Webサービスが最近ようやく完成したのがネット上での注文です。口座の情報の参照や電子交付もできます。こういったことにお金がかかるので直販システムはやはり大変です。
  ただこの世界で42年もやっているとわかるのですが、要するに運用ビジネスというのはそもそも営業してお金を集めてはいけないのです。
  運用ビジネスには2つの鉄則があります。その1つが「スモール・イズ・ビューティフル」です。会社の規模を絶対に大きくしてはいけません。小さい組織であれば小さな資産でも生きて行けるのですが、一度組織を大きくしてしまうとコスト増を賄うための運用資金が必要になります。無理してダボハゼのお金を集める必要に迫られると、例えば短期資金と長期資金が混ざって呉越同舟になったりします。そうなると運用が妨げられてまともな結果が出せません。大きな資産になっても少人数で運用を続ければ、少ないコストで済むので無理して変な資産を集める必要もなければ変な運用をする必要もないのです。
  スモール・イズ・ビューティフルと並ぶ運用ビジネスのもう1つの鉄則が「お金を集めてはいけない」です。資金は運用の方針や方向性や成績でもって集まってくるものです。そうすると純度の高いお金が集まり、純度の高いお金を運用するから成績が出ます。運用をして欲しいのは一般の人達です。自分で運用できるなら自分で運用するけれど、他に仕事もあって忙しいから専門家にお任せするのです。ですから自分で任せる先を探さなければなりません。何故みなさん営業しなければならないのでしょう?年金を始め、みんな間違っています。

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<インタビュアー、記事執筆、写真撮影>
  高橋、桜町