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株式会社GCIアセット・マネジメント「GCIエンダウメントファンド」

  株式会社GCIアセット・マネジメントの執行役員チーフ・マーケティング・オフィサー太田 創様にお話を伺いました。

取材日時 平成28年9月29日
場所 株式会社 GCIアセット・マネジメント

御社のマーケティング部門・営業関連部門のこれまでの活動や取り組みについて教えてください

 当社はこれまで公募の投資信託を扱っておりませんでしたので、投資信託のマーケティング経験がありませんでした。平成27年9月25日の第1号ファンド設定に先立って、7月に当社の代表取締役CEO山内が「エンダウメント投資戦略」を出版しプレマーケティングを行いましたが、実際設定後にならないと、投資家のみなさんの関心はそれほど高まってきませんでした。
 オンラインの活動ではFacebook、ブログ、Webページのお知らせなどのアップデートのほかに、メディア、販売会社、一般投資家の方に月次報告書やニュースをウェブ上もしくはメールで配信しています。投資教育的な内容も多く書いています。当社CEOの山内英貴が以前出版した「オルタナティブ投資入門」にある戦略や考え方、ヘッジファンドを正しく理解していただくことを含め、もっとパブリックにしていきたいという思いがありますね。ライターがいないので私が海外のサイトなどから情報収集して、役立ちそうなニュースや面白そうなネタを適宜アレンジして書いています。月次レポートだけでは語り切れないことがたくさんありますから、続けられる間は続けていきたいです。
 情報提供という意味ではセミナーも有効ですね。試行錯誤していますが、当社ファンドの販売会社である楽天証券さんやSBI証券さんのイベントに参加して、認知を広げていくのがいいかなと思っています。自社でセミナーを開催する資金や労力を、ファンドの中身を開示することや、パフォーマンスを上げることに注げば、結果的にファンも増えていくと考えています。

ご著書でも触れられていますが、公募でGCIエンダウメントファンドを設定した背景や問題意識などを改めて教えてください

 当社は2000年4月の創業当初からオルタナティブ投資を行い、ヘッジファンドの世界でどれだけグローバルで活躍できるのかチャレンジしてきました。オルタナティブ投資はもともと機関投資家向けだったのですが、昨今の低金利下で運用対象が株式と債券だけでは難しい局面になってきています。そこでオルタナティブ投資の戦略を使い、個人投資家に対する運用商品を作れないだろうかという思いが一番の背景にありました。かつ、アメリカでは「エンダウメント」という大学基金の運用手法が、非常に高いパフォーマンスや分散投資効果を出して、実証的にも非常にいいものだと理解され始めたので、このエンダウメントという考え方を日本に持ち込んでやってみようということになったのです。
 コスト面や運用システムなど検討事項はありましたが、当社は独立系運用会社ですので、公募投信設定の決定は迅速に進みました。会社にリテールの投資信託ビジネスを経験した担当者がいなかったから、ブレーキを踏むことなく話が進んだのもあるでしょうね。第1号ファンドを出すには思い切りの良さと決断しかないので、それはそれで良かったと思います。

DCへの参入はお考えですか

 もちろん考えてはいます。しかしながら、残高もまだ少ないですし、トラックレコードを重要視されるので、運用してから1年程度だとDCへの新規参入はとても難しいですね。GCIエンダウメントファンドにはオルタナティブが入っているので、バランス型といっても他の商品とカテゴリーは重なりませんが、採用に向けて根気よく取り組んでいきたいと思います。

投資信託で資産形成をするメリットとデメリットはどんなものがあるとお考えですか

 一般の方がちょっとお金を増やしたいというときに、事実上投資信託しか選択肢はないかなと思います。個別株はハードルが高いし、リスクも高い。正直1万円で1株買えたとしても面白くないですよね。投資信託なら金融に興味が無い方でも、少額で始められますから、それがメリットだと思います。
 デメリットは元本確保商品ではないので、時と場合によっては元本割れすることですね。ただ、現在の景気などを考えたら、投資信託をやらないデメリットの方が大きいかもしれません。金額は抑えることもできますし、元本割れしたとしても経済を知る上での授業料と考えれば、むしろ貴重な勉強になるのではないでしょうか。

日本ではまだ投資信託を知らないし、興味無い人が多いのですが、何が問題だとお考えですか

 これは個人的に思うことですが、日本で投資信託や投資が一般的にならないのは、極端に言うとバブルが崩壊したからではないでしょうか?成功体験がごく短期間か、もしくは無いか。投資しても利益が出るのは五分五分というような感覚なので、給料を少額でも投資に、という考えにはならない気がします。
 それから友人同士でお金の話はあまりしませんよね。「○○さん投信やっていますか? 良い投信があるのですけど」なんて言ったらセールスされるのではないかと警戒されます。金融業界は盛り上がっていますけど、まだ投資や投信がキワモノ扱いされているのも問題です。きちんと勉強すれば、自分でもいい投資信託を見つけられるのに、教えてもいないし、誰に聞いていいかもわかりませんからね。当社はそういった風潮に真っ向から取り組んでいます。そもそも始めたのがオルタナティブ、しかも日本でヘッジファンドですから。オルタナティブ?ヘッジファンド?って、わかりませんよね。しかも今回はエンダウメントファンド。これをなんとか一般化させたいという壮大な夢と言いますか、期待があってやっています。

今後10年で投資信託はよりメジャーになりますか

 投資商品の中では、今でも投資信託はかなりメジャーだと思います。残高だって私募投信を入れれば、もう110兆円くらいです。日本の個人金融資産が1,500兆円ですから、15分の1を占めているわけですし、金融庁の個人資産のパイチャートで見ると投信・保険・株式・預金・その他の分類の中では、投信は大きなものになっていると思います。それをもっと大きくするためには、投資家に資する商品を出していかないといけませんよね。非常に言いづらいことですが、今のように年間20%を超える異常に高い分配金利回りで投資信託が売れるという状態は、正常な状態ではないと思っています。
 今後、各社が新規設定を減らすことはないと思いますが、いい意味で本当に実力のあるファンドが売れるようになれば良いのではないでしょうか。

投資信託で長期投資を考えたときに、マーケティング戦略としてのコミュニティ作りについてはどうお考えですか

 そこは各社非常に苦労していると思います。運用会社単体でセミナーをしたり、イベントをしたりとなると、毎回面白い企画や切り口を変えてやらないと、なかなか集まりません。もちろんカリスマがいて、その人の言うことに賛同してくれるファンを作れればいいですけど、例え1人のアイコンがいたとしても、世代交代せざるを得ないじゃないですか。そうなるとやはり変わってしまいますよね。

他社動向で気になることはありますか

 大手金融機関グループがどんどん大きくなって、寡占が進んでいくことが心配ですね。それ自体は悪いことではありませんが、例えば店舗に行ったとしてもグループの商品しか無いとか、わからないまま売れ筋の商品を買うとか、そうなると良くないですよね。お客様が自分の目で商品を選べるようになるか、勧められた投資信託が自分に合ったものかどうか判断できるようになってほしいと常々思っています。

ここからはGCIエンダウメントファンドについて詳しくお聞きします。まず、このファンドのコンセプトを教えてください

 エンダウメント投資とは何か?米国の大学財団もしくは大学自体の資金証券部のような大学の資産運用をつかさどるものをエンダウメントと呼んでいます。エンダウメントは、もともと英語で寄付とか寄贈という意味です。大学の卒業生や親や関係者が寄付をするわけですね。大きい大学であれば年間数百億円程度の資金が集まるので、それを運用しながら大学の運営、教職員への給与、奨学金、校舎の維持費、研究開発費などに使っていきます。寄付なので返す義務が無い反面、ずっと運用していく義務を背負っているのです。当然単年度で収益を追求するよりも、10年、15年運用して、毎年どれだけリターンを上げるかが重要視されます。
 このコンセプトを取り入れて設定したのがGCIエンダウメントファンドです。当然プライベートエクィティなど流動性が限定される資産は投資信託に入れられませんが「オルタナティブ投資を組み入れて逆相関になるような伝統資産と組み合わせ、リスク・リターン効率に優れたファンド」というのがコンセプトになります。GCIエンダウメントファンドの場合、自社のオルタナティブ投資を3割超組み入れて、他の資産については全てETFで代用してポートフォリオとしての運用コストを下げ、リターンを上げていくといった形になります。

このファンドが個人投資家に向けているものであるというポイントは?

 まず1つに投資信託の形であることですよね。個人投資家を対象としていますから、積立投資であれば500円、1,000円といった小口で買えます。日本の一般家庭でも、エンダウメント同様、家計的には黒字だと思っています。少額かもしれませんが、1ヶ月みたら財布の中に少しはお金が残っているのではないでしょうか。余っているお金を分散させて中長期投資したらいいじゃないですか。エンダウメントという言葉自体は難しいですけど、少額でも長期間運用できるのだから、それを株式や債券からオルタナティブ投資で運用してみませんかということですね。
 株式、債券だけでは実現できないリターンをオルタナティブ投資、具体的には当社のヘッジファンドを組み入れて運用しています。ただし、これを投資が初めての人に理解していただくのは難しいので、そこはチャレンジではありますね。

このファンドの運用哲学を反映しているデータや注目すべき特長などはありますか

 当ファンドは米国エンダウメントのコンセプトを見習っています。オルタナティブ投資部分以外の株式・債券の部分はETFによる運用のため、ポートフォリオ全体としてのベンチマークはありません。基本的資産配分は年1回配分を見直しています。ファンドに組入れられているオルタナティブ投資は、当社が運用するGCIシステマティック・マクロ・ファンド(GSM)で、2014年2月に設定されました。
 GCIエンダウメントファンドの利益を支えるオルタナティブを運用しているのが山本匡ポートフォリオ・マネージャーです。彼は東京大学で数理ファイナンス博士号を取得して、学術誌でヘッジファンドの運用モデルに関する論文を発表しています。その運用モデルに基づいてGSMを運用しています。そういった学術的な研究を取り入れてファンドを運用しているのは、他社とかなり異なった特徴です。今のところ、その研究成果が良好なパフォーマンスに反映されています。

山本ポートフォリオ・マネージャーが卒業された東京大学とは産学連携をされていますよね

 そうですね、産学連携をしていまして、山本を指導した経済学部の高橋教授は当社のアドバイザーでもあります。高橋教授自身、1990年代後半に世界最大のヘッジファンドと言われたLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の第1号日本人アナリストだったのですが、アジア通貨危機後退社された後、東京大学の教授になられ後任を育てることに注力されています。当社は高橋教授と連携し、同大学出身の優秀な人材も採用し、オルタナティブ投資をとことん突き詰めています。これは他社にはできないことだと思っています。

目標とするリスクとリターンの水準は?

 成長型と安定型2つのファンドになりますが、成長型は想定リスクが年間8%、安定型は年間5%くらいを目指しています。リターン水準はなかなか示せませんが、シャープレシオで1くらいを目標にしていますので、それぞれ年間8%、5%程度の水準でしょうか。
 当社の月次報告書ではその内容もヘッジファンドのように開示しています。通常はポートフォリオ全体の年率リターンと標準偏差くらいしか開示しないと思いますが、下方偏差(基準価額下落時のみの標準偏差)、シャープレシオ、ソルティノレシオ(下方標準偏差をリスクで割った数値)も付けて、株式と債券との相関係数も開示しているのです。例えば、ファンドと株価の相関係数をみて株価はそれほど影響しないとか、債券とは全く相関しないとか、そういうことがわかるようになっています。
 余談ですが、先日某販売会社にファンドの説明に行ったら「ソルティノレシオって何ですか?」と聞かれ、ヘッジファンドやオルタナティブ投資はプロの世界でもまだ一般化していないことを改めて認識しました。

ライバルファンドや併せて保有するのが望ましいファンドはありますか?

 ライバルファンドはありませんね。同じコンセプトのファンドが有りませんから。
 このファンドは米国エンダウメントをお手本にして運用しているファンドなので、他のファンドと組み合わせてより良いポートフォリオを組めるかというと、かなり疑問です。いろいろな考えの投資家さんがいらっしゃいますけど、あれもこれも投資するのが本当にいいかはどうかはよく分かりません。せっかく1つのポートフォリオの中でリスク値とリターン目標を決めているので、そういうものがあれば他にあえて持つ必要はないのかなと思います。もちろん、ポートフォリオ全体のリスク・リターン値を調整してみたいという場合は、複数のファンドを持っていただいても構わないと思います。

このファンドの購入者はどのような方で、理想の投資スタンスはどんなものでしょうか

 当社販売会社となっていただいたのは楽天証券さんとSBI証券さんです。新生銀行さんも、今のところネット専用ファンドとして販売して頂いています。オンライン・チャンネルで投資信託を購入される投資家の金融リテラシーは高く、相場観もそれなりに持っていらっしゃる方が多いでしょうね。販売会社さんのイベントでは、男女比率が7:3程度で男性が多く、40代後半以上が9割程度でしょうか。若い世代や学生さんもいらっしゃいましたね。運用にかなり興味を持っている方が多い印象です。
 理想的な投資スタンスは、NISAでも積立でも構わないので長期的に保有していただきたいですね。せっかく利益が出ているのに半年や1年で売ってしまってはもったいないですよ。

投資信託に馴染みの無い方が購入する場合の注意点があればお聞かせください

 これは一般論ですが、販売会社の対面取引であれば購入する投資信託について、正しく説明をしてもらってください。当社にはこのファンド専用のヘルプデスク(03-3556-5040 平日午前9時から午後5時まで)がありますので、そこにお問い合わせいただいても結構です。このファンドのことだったら何でも聞いてください。

最後にいいファンドとは何か、また第三者投信評価機関に期待することをお聞かせください

 いいファンドはやはり安定的にパフォーマンスを上げていることでしょうね。多少期待外れの時期があったとしても、毎年それぞれプラスになっているような。
 評価機関に対しては、掘り出し物のファンドを見つけてくれるような評価機関というのはありがたいですね。単にパフォーマンス出しました、それで上位から何番目ですって、それもいいですけど、面白いアプローチをしているとか、運用哲学が際立っているとか。当社であればオルタナティブをやっているので、何でオルタナティブ会社が投信へ?というような、そういったアプローチですよね。これからは独立系の運用会社もどんどん増えていってほしいと思いますし、その中から世界をリードできるような運用会社も出てほしいと思っています。そういうのをファンドでも運用会社でもいいから、投資家に代わって見つけてくれることを期待しています。

<インタビュアー、記事執筆、写真撮影>
  高橋