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損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント「ぶなの森」

  損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント 菅原繁男 氏に、インタビューを行いました。

取材日時 平成25年9月26日
場所 損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント株式会社 本社

菅原様の現在のお仕事や活動等についてお聞かせください。

 現在は、株式運用部に所属し、ファンドマネージャーとアナリストを兼務しています。ファンドマネージャーとアナリストを分けることが運用会社として一般的かも知れませんが、弊社では戦略的にファンドマネージャーがアナリストを兼務するという体制をとっています。常に複数のセクターをアナリストとしてカバーし、かつ担当セクターのローテーションも実施しています。既に数多くのセクターを担当しており、こうした業種横断的な知識、経験がファンドマネージャーとしての職務に活かされています。現在ファンドマネージャーとして弊社の旗艦ファンドの1つである「ぶなの森」というファンドを運用しています。
 情報収集から分析、投資判断に至るまでが日常の主たる業務になります。アナリストとしてカバーしているセクターについては頻繁に企業訪問を行っています。企業分析の際に意識していることは、企業が有する本質的な成長力を中長期的な視点から理解することです。短期的な企業業績は様々な要素に影響を受け上下します。重要なことは短期業績の方向を当てることでは有りません。短期業績が本質的な成長力と比較して出来過ぎなのか、過少なのかという点です。株価が短期業績に振り回され、本質的な成長力と比較して過小評価されているときが投資チャンスです。
 アナリストとして担当セクターの情報を他のファンドマネージャーと共有しています。また私自身がファンドマネージャーとして、担当外のセクターについては社内のアナリストから情報を得ています。従って社内のアナリストと頻繁に議論していますが、その際ポイントになるのはやはり本質的な成長力の見極めです。
 また「ぶなの森」のファンドマネージャーとして、マーケティング面にも力を入れています。既存のお客様だけでは無く、新規のお客様や販売会社の方など、なるべく多くの方にお会い出来る機会を作り、運用実績の報告や今後の運用方針についてご説明させて頂いています。運用担当者自らが直接ご説明し、ファンドのコンセプトを理解して頂くことが重要だと考えているからです。

エコファンド(テーマ型ファンド)を設定した背景や問題意識などについておきかせください。

 弊社は損害保険会社であるNKSJグループに属しています。NKSJグループは早い段階から環境問題への意識が高い会社でした。NKSJグループは損保会社であるため経営面における環境リスクを評価するノウハウが社内に有りました。またグループ内に弊社という運用会社が有りました。そこで金融面から環境社会推進に貢献することを目指し1999年にエコファンド「ぶなの森」の運用をスタートしました。
 運用プロセスはまず企業の環境経営度を調査し、一定レベル以上に達している企業のみを投資対象としています。その後は弊社アナリストによる企業分析を行い、ファンドマネージャーである私が投資銘柄を決定しています。すなわち運用プロセスは大きく環境経営度分析と財務分析の2段階に分かれています。通常のファンドは後者の財務分析だけで投資企業を決定すると思いますが、「ぶなの森」は環境経営度分析と財務分析の双方において優れている企業に投資することを目指しています。また運用商品である以上、社会貢献自体が目的では無く、運用成績で投資家の皆様のご期待にお応えすることがまず重要なことだと考えています。運用商品を通じて経済的ニーズと社会的ニーズを調和的に実現することが目的です。
 ここで言う環境経営度とは環境関連のビジネスに強みを持つ企業を指しているのでは有りません。ガバナンスの観点から環境に配慮した経営がなされているかを評価しています。一般にエコファンドと言うと、環境ビジネスにフォーカスしたテーマ株ファンドのように捉えられがちですが、そういったファンドは財務面にみにフォーカスしているファンドと何ら変わりは無く、「ぶなの森」とはコンゼプトが異なります。環境経営度の評価とはコーポレートガバナンスを評価しているのに等しく、中長期的な企業価値向上において極めて重要な要素だと考えています。一般にコーポレートガバナンスが企業価値において重要である事に異論は無いと思います。しかしそれは業績動向など定量的側面を見ているだけでは理解出来ません。環境経営に優れた企業は長期的に企業価値を向上することが出来ると考えています。環境経営やガバナンスへの評価は短期的な企業業績や株価には必ずしも反映されません。長期的なオポチュニティと事業リスクに対する評価であると考えています。すなわち企業経営の基盤が優れている企業は、新たな事業機会と生み出す力に優れ、またコンプライアンスの徹底などを通じて、不祥事の発生等による企業価値の毀損を回避することが出来ると考えています。特に長期投資においては、企業の有する無形の価値やリスクの評価が不可欠で有り、財務評価のみでは不十分であると考えています。
 環境経営度分析はグループ会社である損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント社が実施しています。アンケート調査を中心に直接企業の環境関連部署に訪問するなどして情報の収集、分析に当たっています。アンケート調査は企業価値に重要な影響を与える要素に重点を置いて作成しています。アンケートは年に1回実施していますが、適宜時流や社会の関心を反映させ進化させています。また業種によって質問内容を変えるなど決め細かい対応をしています。内容は、環境マネージメント、環境コミュニケーション、環境パフォーマンスの大きく3つのカテゴリーに分けています。環境マネージメントは、環境経営を推進するための組織体制や、経営陣のコミットメンットなどを評価しています。環境コミュニケーションはCSRレポートや環境レポートの公表などディスクローズの姿勢を評価しています。環境パフォーマンスは二酸化炭素の排出量など具体的な取り組みを評価しています。今日では多くの企業が環境経営の重要性を強調する様になりました。実際にどれだけ実行したかを評価するため、環境パフォーマンスの評価を一層重要視しています。アンケートを毎年約800社に送付しますが、回答が返って来るのは約400社程度です。かなり詳細なアンケートをしていますから、アンケートが返ってきたということだけで一定の水準を越えている企業だと考えています。またアンケート回答企業には評価のフィードバックや評価向上のアドバイスなどを実施し、環境意識の向上を図ることを目指しています。
 「ぶなの森」は決して特殊な運用手法を実施しているとは考えていません。今日では社会の環境意識は大きく高まり、環境への配慮が経営戦略や企業の長期的持続性、存続性において不可欠の要素となっています。また既に世の中では様々な物やサービスが環境対応になってきていますが、やがて金融商品についても社会的影響への配慮が当たり前の時代が到来すると考えています。企業経営の面からも金融商品の面からも、環境経営に対する視点は不可欠なものとなって行くでしょう。環境経度分析は投資対象企業に対するデューデリジェンス的側面を有していると言えるのでは無いでしょうか。また欧米では「責任投資(Resposible Investment)」と言われる運用が年金や機関投資家中心に広く普及しています。これは、莫大な資金を運用する年金、機関投資家の投資行動は経済面のみならず社会的影響も大きいと考えられているからです。つまり非財務面を評価するのが「特別」では無く「当たり前」という意識です。日本でも緩やかながらこうした機運が高まっています。「ぶなの森」の運用やマーケティング活動を通じてこうした考え方の理解、促進に貢献していきたいと思います。

話は変わりますが、投資信託のメリット、デメリットや、日本で一般的にポピュラーでない金融商品である要因など、ご意見があればお聞かせください。

 メリットはやはり小口資金で分散投資出来ることだと思います。また個人では投資しづらい国や地域、資産に投資出来ることもメリットです。デメリットは一般にコストが発生する点などが挙げられますが、これはメリットの見合いで評価されるべき問題でしょう。
 投資信託がポピュラーにならない理由には、運用や投資に対する知識、経験が不足していることに加え、漠然とした恐怖感が有るからではないでしょうか。1990年以降の日本経済の象徴としてバブル崩壊とその後の景気低迷が強く印象に残っています。また販売側の営業姿勢も短期的な損得にフォーカスを置いた営業が多いように思えます。日本の株式市場が長期に渡り低迷していたため、成功体験を持つ人も少ないと思います。結果として株式投資は怖いもの、ギャンブル的なもの、というイメージが強いのでは無いでしょうか。長期的視点での資産形成、株式投資の意義、などいわゆる投資教育と言われるもの進めば知識が強化されます。またアベノミクスが奏功し、デフレ脱却が実現した際には株式投資による成功体験者が増加することでしょう。一朝一夕には困難ですが、知識や経験が蓄積されれば投資信託に対する意識も変わるのでは無いでしょうか。

今後10年間の投資信託の展望についてどのように思われますか。

 前述のように知識、経験の不足が投資信託普及の阻害になっているのであれば、これらが改善されることで投資信託がよりポピュラーに金融商品になる可能性が十分に有ると思います。アベノミクスやオリンピックの開催など、日本には過去20年間の停滞や悪循環を転換させる大きなチャンスが来ています。これに運用会社や販売会社など業界関係者の真摯かつ適切な努力が加われば、10年後の投資信託ははるかに大きな市場になっている可能性が有るのでは無いでしょうか。

今後の投信マーケティング戦略の潮流についてお聞かせください。

 投資信託のファンド数は約4000本程度有ります。またインターネット発展であらゆる情報が世の中にあふれています。投資家の方々は投資したくともどのファンドを選べばよいのか分からないとう方が多いのでは無いでしょうか。まず我々運用会社が投資家にとって分かりやすく安心感を持っていただける情報を提供する必要が有ります。このような観点から弊社では今年ホームページ※を刷新しました。
※損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント株式会社:http://www.sjnk-am.co.jp/

 また商品戦略についても、新たに魅力的な商品開発を推進していくことも大切ですが、既存の商品についても長期的な視点から育てるという意識が重要だと思います。新商品販売に偏重し過ぎた結果が4000本という膨大なファンド数に至ったのでは無いでしょうか。「ぶなの森」は1999年に設定し、既に14年以上も市場に存在するファンドですが、現在でも弊社の旗艦ファンドとして大事にしているファンドです。運用成績のみならずディスクローズの充実などにも工夫を凝らし、多くの投資家の方々の支持を受け続けることが出来ていると自負しています。この様なファンドを1本でも多く育てたいと思います。
 また、海外投資家の開拓も重要です。繰り返しになりますが、日本は現在大きな転換期に有る可能性は有ります。多くの海外投資家はこれまで日本への関心は低かったのですが、今後は大きく変化していく可能性が有ります。

販売、運用成績のそれぞれの観点から見たSRIファンドの現状はどのように考えているか、また日本にSRIファンド文化を根付かせるための取り組みについてお聞かせください。

あくまでも運用商品ですので、どんなにコンセプトが立派であっても運用成績が悪かったら投資家の期待に応えることは出来ません。「ぶなの森」については長期的に安定した運用成績を残していますが、SRIファンドというカテゴリーで捉えた場合、必ずしも運用成績が他のファンドと比較して良い訳では有りません。
 一般にSRIファンドというと、単に社会貢献に一生懸命な企業に投資しており、運用成績は二の次とイメージが有るのですが、運用成績を犠牲にしてまで社会貢献を重視する様なファンドは無いはずです。先に述べた様に「ぶなの森」では、長期投資においては企業の有する無形の価値やリスクの評価が重要だと考えており、環境経営度分析はそのための手段です。こうしたコンセプトをしっかりと投資家の皆様に伝えて行くことも重要だと思います。
 先にも述べた様に、海外では年金、機関投資家を中心にSRIファンドが広く普及しています。日本のSRIファンドは「ぶなの森」の様な公募投信が中心で決して普及しているとは言えません。SRIファンドを日本に根付かせるためにはやはり年金、機関投資家といった投資家層の参加が不可欠です。そのためには運用会社が長期投資のために非財務面を評価することの重要性を理解実践し、投資家に対して地道にご説明して行かなければなりません。運用サイド、投資家サイドの双方の意識改革がSRIファンド普及に必要だと思います。

SRI市場があまり良くない中でここまで運用を続けてこられた理由をお聞かせください。

 まず運用面ですが、運用成績は長期的に安定して推移しています。これまで数多くのアワードを受賞し、レピュテーションや知名度の向上につながりました。また営業面においては、販売会社や投資家へのフォローの充実に努めてきました。ディスクローズ資料として単なる運用成績の情報に留まらず、企業の環境関連情報、社会の環境関連トピックなどを毎月発行しています。更に3ヶ月毎、1年毎にもそれぞれ環境関連に関するレポートを発行し、販売会社や投資家の方々から好評を得ています。また、なるべく投資家の皆様に出来るだけ長期的に保有して頂きたいと考えており、販路としてDC(確定拠出年金)を積極的に開拓しました。ご存じのようにDCは将来の年金原資を目的とした長期運用が前提の資金です。DCの販路開拓が運用残高の安定につながっていますし、また「ぶなの森」の運用コンセプトは年金資金の運用に非常にマッチしていると考えています。

注目してほしい運用哲学を反映するファンド・データ等があればお聞かせください。

 運用残高は市場の時価に左右されますが、より投資家の人気度を反映していると思われる運用口数が安定しています。リーマン後からアベノミクス前まで多くの日本株ファンドは日本株市場への不人気から解約が増加しました。しかしこの間も「ぶなの森」の運用口数、運用残高ともにほぼ横ばいで推移しました。これは我々の運用哲学や運用面、営業面での取り組みが奏功した結果であると自負しています。

目標とするリスクとリターンの水準についてお聞かせください。

 目標はTOPIXをアウトパフォームすることを目指しています。リスクとリターンの水準はミドルリスク・ミドルリターンです。

ライバルファンドや合わせて保有するのが望ましいファンドはありますか。

 SRIファンドというジャンルにカテゴライズされているファンドに関しては運用成績や運用残高の情報をチェックしてります。社会的責任投資フォーラム(JSIF)の集計によると、「ぶなの森」の運用残高は公募SRIファンドの中でトップになっています。
(※SRI市場残高:http://www.sifjapan.org/sri/data.html

第三者投信評価機関に期待することをお聞かせください。

 中長期的に支持されているファンドというカテゴリーでの選定を試みて頂きたいです。切り口は先ほどお話した運用口数など色々工夫が出来るのは無いでしょうか。

<インタビュアー、記事執筆、写真撮影>
  高橋、川嶋