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鎌倉投信「結い2101」-Part1

  鎌倉投信 取締役 資産運用部長 新井和宏氏に、SPOCK(大学生が編纂する金融フリーペーパー)vol.14の編集者と合同インタビューを行いました。

取材日時  平成25年2月19日
場所        雪の降る古都鎌倉の鎌倉投信本社屋

新井様の現在の取組みやこれまでの活動について概要を教えてください。

  私は東京理科大学という理系の大学で、品質管理や統計を専門に学んでいました。卒業後は住友信託銀行に就職し、最初の3年間は渋谷支店の窓口、その後は自らの勉強のため異動の希望を出して運用の調査部(当時は投資調査部)に配属してもらいました。そこでの仕事は投資関連の調査です。投資関連の調査には、クオンツと言われる計量調査とアナリストと呼ばれる企業分析の2種類あり、私自身は5年間クオンツを担当していました。様々な調査、研究をしていく過程において、計量調査いわゆるクオンツといった中で最も優れた会社が気になっていたのです。当時ではバークレイズ・グローバル・インベスターズ(以下BGI)がそれにあたりました。
  2000年に私はBGIに転職しました。BGIではチームで数兆円を運用し、モデルの作り込みや改善を担当していました。例えば、海外株式のアクティブ、為替戦略でいうとアクティブのヘッジからパッシブのヘッジ、更に状況に応じてヘッジしていくダイナミックヘッジという手法等を全て用いた運用をやっていました。為替に限らずアセットアロケーションや、オフショアファンドの設定、オフショアのヘッジファンド管理等もやっていました。ほとんどの金融商品を取り扱ったので営業と連携しながらお客様に色々な提案をし、様々な商品の構築をしました。この8年間は、日々成長し非常に充実した期間でしたね。
  BGIで自分が特に気に入ったことは非常に合理的で、人に依存しないシステム化された運用方法を取っていることです。人はいつか死にますし、辞めてしまいます。例え人が変わったとしてもモデルは残り続けるので、運用手法を質的に維持することができるのです。そのためにBGIでは人が考える思考そのものをモデル化、つまり人間の行動ファイナンス的なものも全て織り込んだモデルを作っているのです。BGIでの仕事はとてもエキサイティングで大好きな仕事でしたから、ずっと続けたかったのですが、残念ながら病気になり、BGIを辞めることになりました。
  現在は、鎌倉投信で運用責任者をやっています。鎌倉投信は投資信託の運用と販売を行っている独立系の会社でして、そこで「結い2101」というファンドの運用責任者をしています。この他にNPO法人「いい会社を増やしましょう」の理事、横浜国立大学の経営学部の非常勤講師、経済産業省がやっている「おもてなし企業選」の選考委員も務めています。また、障碍者のスキー指導もさせて頂いています。このように活動が多岐にわたっているのは、我々がしたいことというのは「色々な角度から社会問題を解決していかない限り日本は良くならない」という考えから来ています。我々ができる範囲のことをやっていくというのが我々のスタンスなので、できる限り色々なことに挑戦しています。

創業に至った経緯を教えてください。

  自分は病気になったので、仕事が合っていない、仕事は辞めようと思ったのです。自分の好きなスキー場で大好きなスキーをやり、好きな仲間を呼べる経営者になろう、ITも一応できるので、webの仕事なんかをして食べていこうと考えていたのです。ここまで頑張ったのだから、自分の好きなことをして楽しもうと北海道の物件探しをしていたのですよ。そんな時に、社長の鎌田が病気療養中の私を呼び出して、「新井さん、ちょっとやり残したことがあるでしょう、金融で。もう一回一緒に金融やりませんか?」といってきたのです。彼はバークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行の副社長だったのですが、2008年に会社が吸収合併することになり会社を辞めていました。そして、世界を回って、金融が正しく機能しないと社会は良くならないという思いに至り、自分と一緒に金融をやろうと誘ってきたのです。もちろん、最初は断りましたよ。でも、金融を嫌いになった訳ではないので、鎌田がやろうとしていることは何か、どういうことかというのは何となく理解しつつ、それを自分がやる必要があるのかと色々考えましたね。
  その時に出会った本が法政大学の坂本先生の「日本でいちばん大切にしたい会社」でした。この本を読んで私は確信しましたね。例えば障碍者を雇用して利益を生み出している会社は、彼らにしかできない仕事を任せ、彼らに期待している。ボランティアではなく雇用をし、彼らが結果を出してくれるから会社が成立する。そういう企業が日本にあるということを知り、それを応援する仕組みを作らないといけないという使命感が湧いてきました。WinWinの関係になる。そういう会社の存在は衝撃的でしたし、そういう会社に投資をすることで、応援する仕組みができたらみんな嬉しいじゃないですか。こういう思いをしたことをきっかけに、本当にできるかもしれないと思い2008年の11月に鎌倉投信を設立しました。
  設立にあたっては、「運用哲学を決めるということ、運用のやり方を決める」という、ここだけは私が絶対に自分でやりたいと思っていたので、そうさせて頂きました。運用会社で一番重要なのは運用哲学だと自分は考えています。BGIの「投資は科学」ではなく、「投資はまごころだ、金融はまごころの循環である」と定義しました。BGIの真似をしたところでこちらは1人です。同じことをしても勝てる訳がありません。しかし「まごころ」という視点で物を見るという意味では我々はどこよりも秀でています。「まごころ」という観点で企業を評価し運用する、そういった会社を応援する仕組みであることを、お客様にわかって頂けるように努力しています。

長年金融業界に務めていて感じた金融に対するやりがいや難しさを教えてください。

  BGIにいた時は、お客様に何百億何千億というリターンを返し続けることにやりがいやおもしろさを感じていましたし、会社の中に集まっている物凄く優秀な方々と触れながら、話しながら新しい商品を作っていく、前へ、前へいくこのプロセスが楽しくて仕方ありませんでした。色々な物を開発して業界をリードしてきたという意味ではとても充実していましたね。しかしその反面、金融というのは、結果が出ない部分も当然ある訳です。製造業だと何か物が生まれたり、見えるものになったりしますけど金融はバブルのように消えてしまう可能性がある訳です。それまでずっと積み重ねてきたものを、リーマンショックで全て失ったお客様に何もリターンを返せずに解約される。これほど辛いことはありません。嫌な思いだけをして消えていくお客様というのは決して戻りませんし、「何の役にも立てない虚しさ」というのは“金融ならでは”なのです。リーマンショックの後、金融機関は叩かれまくり、極端な話、仲間内では親が金融機関に勤めているというと子供が周りから責められるような事態もあったそうです。その辺が他の業種とは違う難しさですね。

「投資はまごころである」というのは、人に依存しすぎているような気がしますが。

  私たちの運用手法は二つに分かれています。一つは、安定的に運用するために会社の「まごころ」部分を見抜くこと。もう一つは、以降のポートフォリオ管理プロセスを実はシステム的にやっていることです。我々が運用の中で定義している「まごころ」とは「すべてのステークホルダーを幸せにできるような会社」「社会問題を解決している会社」など日本に必要とされる会社です。ここに合っていれば、その後どう運用するかはクオンツになってくるので、極端な話、私がいなくなったとしても運用は続くのです。

アベノミクスで日本経済が本当に再生するのかどうかと議論されていますが。

  経済再生のためには、政府に色々な政策を打って頂かないと困りますが、実際、それだけでは本質的な解決にはなりません。企業がしっかりと活動した上で結果を出していかないといけないのです。政府はそれを支えるだけの役割であって、あくまでも民間がしっかり結果を出していかないと良くはならないと思います。なぜなら、アベノミクスがある前も後も社会問題は変わってないはずです。労働人口が増えませんとかニート、フリーターがどんどん増えていますとか、障碍者雇用が全然増えませんとか、様々な問題がある中で政府は「ちょっとサポートしましょう」といってくれるだけであって、実際にやるのは企業です。政府の後押しでスピード感は変わるかもしれませんが、企業がきちんとした考えの中で結果を出したり、もしくはそういった会社を作ったりしない限りは本質的には変わらないと思います。ですからアベノミクス自体はそれを支える面でのプラスはあるかもしれないけれど、本質的に何かが変わるわけではないということ、スピード感の変化でしかないということを認識することがとても大事だと思っています。

投資信託を保有するメリット、デメリット、また投資信託の現状の問題点などを教えてください。

  私は「投資信託」は投資の入門編という位置付けであると思っています。投資信託は便利な商品であり、プロに任せることで、こういう運用でこういう結果が出ますということを享受できます。投資信託から投資している中で気に入った銘柄があれば、お客様がその会社の株を直接買うことに繋がるケースもあります。このように、お客様が本当の投資家になるための入り口として投資信託が機能するのは素晴らしいことだと思います。プロが運用することにメリットを感じているのであれば、投資信託を楽しんでもらえるのではないでしょうか。
  もう一つは少額で分散投資ができるところが大きなメリットですね。資産を少額から形成するためには大変効果的なツールであることは間違いないと思います。
  デメリットというのは現状の投資信託の問題点でもありますが、販売会社の言いなりになって商品が作られるので、販売ありきでやっていることですね。販売会社の力が強いのでそれに左右されるような運用をしてしまいがちなのです。つまり運用する側ではなく売る側の理論だけで商品を作っているのです。お客様側のニーズではありません、売る側のニーズです。作る時に「上がりそう」と期待されるテーマのものを出し、いくら売りたいか、いくら集めたいか、手数料はいくら欲しいか考え、更に管理の手間やコストを考えて投資信託に期間を設けます。残高がどんどん減っていった時に「償還したので乗り換えてください」といえれば売る側にとっては楽ですからね。
  こういうことは業界的にはあまり言ってはいけないのです。正直に言うことでリスクもありますからね。でも私はこういうことをしたくない、だから直販でやっているのです。

アメリカでは投資信託というのは日本よりもかなりポピュラーで、日本ではあまり浸透していないという部分があります。この点についてはどう思われますか。

  いくつかありますけど、アメリカって広いですよね。すごく広いので、なかなかこうやって運用者に直接会ったり、色々な情報を入手したりということができないから間接的な人が多いのですよ。具体的にいうとアドバイザーとかコンサルタントとかそういった方々が機能として非常に発達しているのです。そうすると、よくわからない個人投資家もそういう方々に聞いて投資するのが当たり前、それで聞いたり相談したりすることに報酬を払うのが当たり前になってくるのです。報酬を払うのが当たり前なので、アドバイザーやコンサルタント達が機能しなければならないという努力をし始めるのです。
  一方日本は逆にそういう機能が発達しづらいのです。ちょっと行けば会えてしまう環境があるので、アドバイザーやコンサルタントといった機能が発達していない。そして、彼らに聞いたり相談したりすることにお金を払うという習慣がない。ですから、クオリティが上がらない。あともう一つは、日本は圧倒的に銀行が強いのです。それはそれで良かったのですけれど、そうした中でもその差というのはとても大きいということ。なおかつ日本はバブルで痛い目に遭った方がもの凄く多いのです。この痛みというのはやはり引きずっていて、投資に消極的になってしまう方が非常に多いのも事実です。そもそも下がるものに対して免疫がない中、思い切り下がって痛い目に遭い続け、結局良いことがなかったというようなトラウマが、最も日本でポピュラーにならない要因の一つではないかと思います。しかも先程話した売る側の理論が結果としてマイナスに働いてしまって、例えば毎月分配型投信なんかは、結局投資家自身の資産が減ってるだけだということが後からわかって、痛い目にあったというような口コミがどんどん広がり、余計に皆さんは手を出さない方がいいなと思ってしまうのですよね。

今後10年、投資信託はどうなっていくでしょうか。

  今まで色々な形で販売者(売る側)主導であるとか悪いことをいってきましたけれど、投資信託は変わらなければならない、ということは業界自身も気づいていますし、すでに業界にいる人たちが少しずつ変わり始めていると思います。ですから10年後はですね、これは期待も含めてですが、質にこだわるように変わっていくのではないかと考えています。そして、投資信託の数も淘汰されて全体的に減っていき質的レベルも上がっていくと思います。

投資信託という商品をどう訴求していくのか、何か取り組みがあるのでしょうか。

  そうですね。直販というのは銀行とは違って便利な口座管理の仕組みがありません。そこで、パワーソリューションズさんと共同で開発している「My鎌倉倶楽部」というサイトを利用して、将来的にはSNSで我々の活動を伝えたり、お客様同士のコミュニティ作りの場を提供したり、ニーズに合わせた情報を提供したり積極的に取り組んでいきたいと思っています。我々のお客様は30代40代の方が多いので、この層の方々の期待に応えられるよう変えていこうと考えています。
  もう一つ、大手でも取り入れている「お客様の意見を聞きながら商品開発をする」というものを取り入れようと考えています。お客様が本当に必要としている商品を、比較的金融リテラシーが高い方々の意見を聞きながら開発するのです。こういう動きを見るとマーケット戦略も少しずつ変わっているのかと思います。

コミュニティ作りにはやはり力をいれていますか。

  我々のビジネスというのはベースが基本口コミになっていますのでコミュニティからの情報発信というのは財産になりますね。コミュニティ自体が繋がり、そこから何か生まれることによって、我々自身の活動が多面的に影響を及ぼすということが過去の事例でもわかっています。鎌倉投信の創業理念の志は3つの「わ」です。和・話・輪を育む「場」でありたい、今後も色々な場作りをしていきたいと思っています。
  もう一つは、今まで投資信託というのはあくまでもお金の商品だけでしかなかったものが、コミュニティに参加することによって意識が変わるのです。お金だけの付き合いだと心理学的に不安にしかならないのです。しかしコミュニティが存在すると、互いにアドバイスしたり励ましたりと心の支えができ、不安になった時でもお互いに相談できると、勝負どころで積極的になれるのです。コミュニティが出来上がっていると皆で応援しようと自信を持っていえるようになるのです。

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<インタビュアー、記事執筆、写真撮影>
  高橋、桜町、SPOCK14号編集部