※協賛している東京経済政策研​究会(TSEP)メー​ルマガジン第3号
(2011年10月10日)の書評と同一の内容です。

日本経済新聞の2010/9/18にも特集されているように、サラリーマンの
8人に1人が加入している確定拠出年金(日本版401k)に関して
継続的な(投資)教育の実施義務が明文化された法案が成立し、
「次の10年」の課題は投資教育の強化になると言われています。

そこで、今回、先日ガイアの夜明けでも特集された鎌倉投信の本
をご紹介させていただきます。

まず、この本が面白いと感じたところは、ファイナンスの基本で
あるリターンとリスクの考え方(つまり、リターンとは、収益で
あり、リスクは収益のブレであるということ)とは違った新しい
投資の考え方を提示している点です。本書では、以下のとおりリ
ターンとリスクを捉えています。

リターン:「資産形成×社会形成×こころの形成」
 ※収益だけでなく投資先の会社の事業を通じて社会に貢献し心
  の充足感をえること

リスク:「何に投資しているのかわからなくなること」

この考え方を軸にして、議論が展開されていきます。以下に、各章
で述べられている内容を章のタイトルとあわせて簡単にご紹介します。

第1章 儲けようとしない”自利利他”のこころが投資に利益をもたらす
<ポイント>
これからは「日本が抱える多くの社会的課題を解決する機能を
本業に内在させることが、会社が成功するために必要な要素」
となる。

第2章 高いリターンを求めない年輪運用
<ポイント>
鎌倉投信は、満期がない「投資信託」、不特定多数の投資家が参
加する「公募」、顔のみえる「直販」の3つの方法によって、持
続的且つ自律的な社会の発展に貢献している。
これらの連鎖からおきる価値の創造が投資家にとっての長期に渡
るリターンの源泉になる。

第3章 日本でいちばん投資したい「いい会社」
<ポイント>
鎌倉投信の「結い2101」の投資対象銘柄における視点は
「人・共生・匠」である。その視点で選定し実際に保有している
会社の事業内容を紹介している(11社)

第4章 目に見えない価値が目に見える価値を生む時代
<ポイント>
社会的課題が事業の中核にある会社こそがこれからの日本に必要
とされる価値創造型の「いい会社」であり、鎌倉投信は、社会的
責任の「実質性」「持続性」の2つを判断基準とし「いい会社」
を見極めている。

なお、ここでは日本のベンチャー企業創業率が先進国の中でも最
低である理由が新規事業に対する金融的支援の枠組みがあまりに
も弱いことという主張もされています。その上で、成熟化が進む
日本だからこそ、新しい事業創造、ベンチャー企業への積極的な
取り組みが必要不可欠と述べています。個人的にはこの章がもっ
とも読み応えがありました。

第5章 「場」としての鎌倉投信
<ポイント>
鎌倉投信の受益者総会で大切にしているテーマは「顔の見える金融」

終章 投資の果実とは
<ポイント>
投資の果実=資産形成×社会形成×こころの形成

以上のような本書の概要を踏まえて、最後に私の意見を一言。

投資信託はどうしても「売りっぱなし」になってしまう傾向にあり、
そこに現在の投資信託が抱える課題があると個人的には感じてい
ます。定期的に運用報告書を送付し、その内容を読ませるだけで
は運用者から受益者に伝えたい想いはなかなか届きません。これ
が、長期で保有していこうという受益者の思いを萎えさせる原因
のひとつかもしれません。そのような中、鎌倉投信は、上場会社
でいう株主総会のような形式で、受益者に向けてきちんと報告を
行っており、これはすばらしい取り組みに思えました。投資信託
にだまされてはいけない、投資信託は信用できない、と身構えて
しまっている投資家の方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。

eFundEv 高橋忠郎

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